法人格とは?種類やメリット、取得方法、注意点を解説

法人格とは?種類やメリット、取得方法、注意点を解説 |

法人格とは

法人格とは、法律が組織や団体に人間と同様の人格を認めることをさします。
法律上で権利や義務の主体となれる資格を持つことで、この概念により、企業や団体(法人)は、個人(自然人)と同じように契約を結ぶ、口座を開設する、訴訟を起こすなどの法的行為を行うことが可能になります。
自然人とは、生まれた瞬間から死亡するまで、法的に権利や義務を持つことが認められている個人のことを指します。

法人格の取得は、個人の責任と資産を法人のものと分離することを可能にし、事業活動におけるリスク管理を容易にします。
たとえば、法人は自身の名義で不動産を所有したり、契約を結んだりすることができ、これにより個人資産の保護が可能になります。
また、法人は永続的な存在であり、代表者やメンバーが変わっても継続して事業を行うことができます。

ただし、法人格の濫用を防ぐため、特定の状況下では法人格を否認し、背後にいる個人に直接責任を問うことが可能です。
これは「法人格否認の法理」と呼ばれ、法人が形骸化して実質的な活動がない場合や、法人化して法律上の義務を逃れるなど不正な目的で利用されている場合に適用されます。
この法理は、法律上認められたものではなく、判例によって形成されたものです。

総じて、法人格は組織や団体が社会的に法律で守られた地位を持ち、権利と義務を有することを可能にします。
これにより、法人は自身の事業を効率的に運営し、成長させることができるのです。

法人格の種類

法人格を持つ組織は大きく「公法人」と「私法人」に分けられます。

公法人

公法人とは、国や地方自治体などの公的な機関を指します。これらは公共の目的を達成するために存在し、政府や自治体が直接運営する組織です。

私法人

私法人は、公法人とは異なり、個人や集団によって設立された組織で、大きく「非営利法人」と「営利法人」に分類されます。

非営利法人

非営利法人は、利益を目的とせずに、社会的・公共的な目的を達成するために設立された組織です。代表的なものには以下のものがあります。

一般社団法人
共通の目的を持つ人々によって組織され、その活動を通じて社会に貢献することを目的としています。

一般財団法人
特定の公益的目的を達成するために、資産を基に活動する法人です。

特定非営利活動法人(NPO法人)
社会的な課題の解決に貢献する活動を行うために設立される法人で、保健、福祉、教育など広範な分野で活動します。

営利法人(会社)

営利法人は利益を得ることを主な目的として設立された法人で、主に以下の種類があります。

株式会社
株式を発行して資金を調達し、株主からの出資をもとに事業を運営します。出資者の責任は出資額に限定されます。

持分会社
出資者自らが経営に関わる形態で、合同会社、合資会社、合名会社があります。合同会社は有限責任、合名会社は無限責任、合資会社は両者の混合型です。

法人格を取得するメリット

法人格を取得するメリット

法人格を取得することで、事業の信頼性向上、資金調達のしやすさ、税務上のメリットなど、多方面にわたる利点があります。

法人名義を使用できる

法人格を取得すると、個人名義ではなく法人名義で銀行口座の開設、不動産の登記、契約行為などが可能になります。これにより、事業運営がスムーズになり、代表者の交代や内紛があっても、事業の財産と代表者の個人財産が明確に区分され、トラブルを回避しやすくなります。

事業上の必要性を満たせる

一部の企業では「法人でなければ取引しない」という方針があります。法人格があることで、これらの企業との取引が可能になり、事業の幅が広がります。

資金調達がしやすくなる

法人格を持つ企業は、銀行融資や補助金・助成金の申請がしやすくなります。企業としての信用力が高まるため、より良い条件での資金調達が期待できます。

人材を確保しやすくなる

法人としての地位や福利厚生を提供できるため、優秀な人材を確保しやすくなります。これは、特に人手不足が深刻な現代において大きなメリットです。

事業承継が円滑化

法人格を有すると、代表者や株式の譲渡を通じて事業承継を行うことができます。これにより、個人事業主に比べて、事業の持続性が高まります。

税負担の軽減

法人税と所得税の税率は異なり、企業によっては法人化することで税負担を軽減できる可能性があります。また、経費計上できる範囲が広がり、税務上のメリットを享受できます。

その他のメリット

  • 法人格を有することで、外部からの信頼を得やすくなります。
  • 法人化することで、より多くの経費を計上できるようになります。
  • 法人は赤字を10年間繰り越すことができ、将来の税負担を軽減できます。

法人格を取得するデメリット

メリットと同時に遵守すべき義務の増加や運営コストの上昇というデメリットも伴います。

法人としての義務が生じる

法人格を取得すると、法人として様々な法律上の義務が生じ、これには納税義務や社会保険への加入、決算公告、帳簿の作成と保存などが含まれます。これらは全て法律に基づき遵守しなければならない厳格な要件です。自然人としての活動と比べ、法人としてはこれらの義務を負担しなければならず、その遵守には時間とコストがかかります。

法人格の取得や維持にコストが生じる

法人格を取得するプロセス自体にも、そして取得後の維持にもコストがかかります。例えば、株式会社を設立する場合、定款認証印紙代や登録免許税など初期費用が数十万円単位で必要になります。また、設立後も決算書の作成、税理士への報酬、必要な許認可の取得など、個人事業主の運営に比べて追加の経費が発生します。

これらの義務やコストは、特に小規模なスタートアップや個人事業主から法人への移行を考えている場合、大きな負担となり得ます。法人化に伴う責任の増大や手続きの複雑化は、事業運営における負担の増加を意味します。

法人格の取得方法

設立する法人の種類によって取得方法は異なります。ここでは営利法人と非営利法人の法人格取得方法と、組織変更について説明します。

法人格の取得は、事業の性質や目的、将来の計画に応じて適切な法人形態を選択し、それぞれの法人形態に応じた手続きを進めることが重要です。

営利法人の法人格取得方法

株式会社

  1. 基本事項の決定:商号、事業目的、本店所在地、事業年度、設立時の出資金額、役員等を決めます。
  2. 印鑑登録と印鑑証明書の取得:法人の印鑑を作成し、役員の実印と共に印鑑登録を行います。
  3. 定款の認証:公証人に定款を認証してもらいます。
  4. 設立登記:設立時取締役が設立登記を申請します。この登記申請日が法人設立日となります。

合同会社(LLC)

  1. 基本事項の決定:商号、事業目的、本店所在地、事業年度、社員、設立時の出資金額、役員等を決めます。
  2. 印鑑登録と印鑑証明書の取得:同上。
  3. 定款の作成:公証人認証は不要です。
  4. 設立登記:役員が設立登記を行います。

非営利法人の法人格取得方法

一般社団/財団法人

  1. 基本事項の決定:目的、社員(一般財団法人の場合は設立者)、役員等を決めます。
  2. 定款の認証:公証人による定款認証を受けます。
  3. 設立登記:設立時役員が設立登記を行います。

NPO法人

  1. 基本事項の決定と定款の作成:目的、役員、事業計画等を定めた定款を作成します。
  2. 設立総会の開催:設立総会を開催し、定款を承認します。
  3. 所轄官庁への認証申請:所轄官庁に設立認証を申請します。
  4. 設立登記:認証を受けた後、設立登記を行います。

組織変更について

営利法人間

株式会社、合同会社、合名会社、合資会社間での組織変更は可能ですが、変更には特定の手続きが必要です。商号の変更、役員の変更、定款の変更などが含まれます。

非営利法人間

一般的に、非営利法人と営利法人間の組織変更はできません。異なる法人形態間で変更する場合は、新たに法人を設立し、既存の法人を解散するか、活動を移管する必要があります。

法人格を取得できないケース

特定の状況下ではその法人格が否定されることがあり、これは「法人格否認の法理」と呼ばれ、法人としての独立性が認められない状況を指します。

法人格が否認されると、法人としての保護を受けることができなくなり、責任が直接経営者や株主に及ぶことになります。これは、法人設立の目的が適切でない場合や、法人としての独立性が守られていない場合に発生するリスクです。法人格否認の法理は、法人を不正な手段として濫用することを防ぎ、第三者を保護するために存在します。

財産の隠匿や強制執行の回避

法人を設立し、財産を移転することで、個人の責任から逃れようとする行為が該当します。たとえば、個人の借金から逃れるために法人名義で財産を隠すような場合がこれにあたります。

会社と支配株主の財産や業務の混合

会社の財産と支配株主の個人財産が明確に区分されていない、または業務が混同している場合が該当します。この状況では、法人としての独立性が認められず、結果として法人格が否認されることがあります。

株主総会・取締役会が機能していない

法人が正常に運営されていることを示す株主総会や取締役会が開催されていない場合、これも法人格否認の対象となり得ます。この場合、法人が形式上の存在に過ぎず、実質的には個人の意思で運営されているとみなされるためです。

法人格を取得する際の注意点

適切な法人の種類を選択する

法人格の取得目的を明確にし、その目的に最も適した法人の種類を選択することが重要です。営利目的であれば株式会社や合同会社が、非営利目的であればNPO法人や一般社団法人が適している場合が多いです。設立費用やランニングコスト、法律上の義務などを考慮して、最も効率的かつ効果的な法人形態を選びましょう。

専門家に相談する

法人設立には多くの法律知識が必要となります。特に税法、会社法などの複雑な法規制を適切に理解することは、非専門家にとっては難しい場合が多いです。不確かな点や不明な点は、税理士や弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。これにより、設立後に後悔することなく、法人運営をスタートできます。

法人の組織変更の可否を理解する

既に運営している組織の法人格を変更したい場合、すべての変更が可能というわけではありません。特に非営利法人から営利法人への変更、またはその逆の変更は、新たに法人を設立して事業や財産を移転する必要があることが多いです。組織変更を検討している場合には、可能な変更とその手続きを事前に確認しておくことが大切です。

法人格否認のリスクを避ける

法人としての義務を遵守しない、あるいは法人格の濫用があった場合、法人格否認のリスクがあります。法人としての独立性を保ち、個人と法人の財産や業務が混同しないように注意し、正式な株主総会や取締役会を定期的に開催することが重要です。これにより、法人としての信頼性を保ち、法人格否認のリスクを避けることができます。

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